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前提事実(争いのない事実並びに証拠(略)により容易に認められる事実) |
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(1) |
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当事者
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被告三菱自動車工業株式会社(以下「被告三菱自工」という。)は、自動車及びその構成部分、交換部分並びに付属品の開発、設計、製造、組立、売買、輸出入その他の取引業を目的とする株式会社であり、自家用普通乗用自動車(札幌(番号略)、デリカ・スペースギア、車体番号(略)。以下「本件車両」という。)を製造した製造業者である。
被告北海道三菱自動車販売株式会社(以下「被告北海道三菱自販」という。)は各種自動車の販売等を目的とする株式会社であり、本件車両を販売した者である。同被告の全被告は、被告三菱自工がこれを保有している。
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A |
(以下「原告A」という。)は、後記(2)の事故発生当時、本件車両を運転していた者である。
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B |
(以下「原告B」という。)は、原告Aの妻であり、後記の事故発生当時、本件車両の助手席に同乗していた者である。
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(2) |
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事故(以下「本件事故」という。)の発生 |
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発生場所 |
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北海道山越郡長万部町字花岡付近の国道5号線(片側1車線)上
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事故様態 |
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原告Aは、函館から札幌方面へ向けて本件車両を運行し、先行者車2台を追い越すために加速し、対向車線に出追越しを行ったところ、本件車両のアクセルバーが全開状態となる等の異常が発生した。その後、本件車両は、安全性を失いながら減速し、最終的には進行方向と逆向きの形になったところで、折から対向してきた大型車両と衝突するに至った。
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(3) |
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製造物の欠陥 |
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本件事件当時、本件車両の噴射ポンプ(エンジンのシリンダー内の燃焼室に燃料を噴射するためのもの。)のワックスレバー部分が、追越しの際に破断するなど、当該部分が通常有する安全性に欠けていた。ワッックスレバーの破断により、燃焼室での燃焼噴射量を制御するアクセルバーがほぼ全開状態となり、エンジンの回転が高回転になるに至った。 |
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(4) |
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責任原因 |
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被告三菱自工は、本件車両の製造業者として、製造物責任法3条に基づき、本件事故により生じた損害を賠償する責任がある。 |
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2 |
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争点 |
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(1) |
過失相殺 |
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(2) |
損害額
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(3) |
被告北海道三菱自販が製造物責任法3条に基づく損害賠償責任を負うか(同被告が同法2条3項3号に定める実質的な製造業者に当たるか)。 |
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3 |
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争点に関する双方の主張 |
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(1) |
過失相殺について
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(被告らの主張) |
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原告Aは、対向車が迫ってきているにもかかわらず、安易に判断して 衝突前の走行速度ないし走行距離に関する原告主張や、ワックスレバー破断後のアクセルレバーの開度等を前提に、本件車両の客観的性能等を踏まえて勘案すると、原告Aが追越しを開始する段階において、既に本件車両が法定速度をはるかに超えて高速走行(時速130キロメトール程度)していた事実が窺われる。また、エンジンが高回転になったとしても、適切なブレーキ操作及びセレクターレバーの操作をすれば十分減速できたにもかかわらず、原告Aは、セレクターレバーをバックに入れる等の不適切な運転操作をしたために、本件車両を制御することができなくなったものである。したがって、相当程度の過失相殺がされるべきである。 |
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(原告らの主張) |
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エンジンが高回転にならなければ、十分に先行車両2台を追越すことができたのであるから、原告Aの追越し行為自体に過失はない。また、高回転になった後、原告Aは、ブレーキを3、4回踏んだが、全く減速せず、とっさにレバーをニュートラルに入れようとして、バックに入ったところ、急激に減速した。エンジン全開後の非常時における運転操作について責められるべき理由は全くない。 |
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(2) |
損害額について |
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(原告らの主張) |
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原告らに生じた個々の損害の項目及びに金額等については、判断中(第3の2項)に適宜記載した。
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(被告らの主張) |
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不知ないし争う。 |
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(3) |
被告北海道三菱自販の製造物責任について |
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(原告らの主張) |
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被告北海道三菱自販は、被告三菱自工の製造する自動車の北海道における販売を専属的に引き受けており、被告三菱自工の100%子会社であり、三菱という名称において共通し、パンフレットにおいて被告北海道三菱自販の名称が大きく記載されている。
こうした、被告北海道三菱自販における販売形態や製造業者との組織的な関係、製品に付された表示全体の内容及び様態等に照らせば、同被告は、製造物責任法2条3項3号に定める「販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者」と言うことができる。
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(被告北海道三菱自販の主張) |
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製造物責任法2条3項3号に該当するためには、販売者と表示していても当該表示者が当該製造物の製造者として社会的に認知されている者であるとか、製造等の実情から考えて実質的な製造者をいうものと理解されている。一般的に、自動車の販売会社が全国各地に存在しており、販売のみを行っていることは周知の事実であるから、社会的に製造者として認知されているわけではないし、また、製造及び加工等の実情から考えても実質的な製造者とは言えない。したがって、被告北海道三菱自販が製造物責任を負うことはない。 |